学校長  菅沢  茂 
 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとう。保護者の皆様、本日はまことにおめでとうございます。本校は芝浦工業大学の歴史と伝統を踏まえ、新たな高等学校教育の創造をめざして1980年にこの柏市増尾の地に設立されました。1990年には男女共学とし、1999年には中学校を開設して今日に至りました。これまで本校は約2千4百名の優秀な卒業生を高等学校に送り出してきましたが、今日から皆さんもその仲間に入るわけです。
 本校の建学の精神「創造性の開発と個性の発揮」は、創立当初からの一貫した教育目標であり、このモットーにはぐくまれた校風の中で、皆さんが身をもって自主独立の気概と創造的な精神をつちかってきたことに、心から敬意を表するものです。創造性の開発とは、一人一人が今もっている自分のよさを最大限に生かし、現代社会に新しい文化を創り出して貢献することです。この精神は、卒業後も皆さんの宝物となるに違いありません。
 さて、卒業式は新たな人生の始まりのときです。中学校での話も最後となりますので、皆さんの旅立ちに際してはなむけの言葉を贈りたいと思います。
 一つは、「良識をもつ」ということです。職業や思想、信条の別にかかわらず、社会人として不可欠なコモンセンスを身に付けることです。選挙のときは投票にいく。家の前が汚れていたら掃除をする。近所の人に道で会ったらあいさつをする。困った人を見たら助けてあげるなど、市民としてごく普通のおこないです。高校生になったらぜひ心掛けてください。
 もう一つは、「本物との出会い」ということです。皆さんは、新渡戸稲造という人を知っていますか。1899年に“Bushido, the Soul of Japan” (『武士道』)を英文で発表して日本人の優れた道徳観を世界に紹介しました。明治から昭和にかけて日本と欧米の懸け橋となった人物で、明治維新が生んだわが国を代表する国際的な教養人といえます。
 20年ほど前に札幌の植物園を見学したとき、白塗りの古い建物で生物学者宮部金吾の記念館がありました。2階のガラスケースの中に、新渡戸がこの宮部や内村鑑三ら同期生と一緒に映った写真があり、“ボーイズ・ビ・アンビシャス”で有名なクラークとかわした誓約書が添えられていました。
 この3人は関東以北の清貧な武士の子に生まれました。明治維新で江戸幕府が崩壊し奥羽同盟の夢が破れた後、欧米の新しい文化に救いを求めたのかもしれません。成績優秀であったため当時神田にあった東京英語学校から札幌農学校の2期生に官費で留学しました。クラークは、1876年札幌農学校創設のため教頭として来日し、8ヶ月にわたり植物学の教授や道徳教育に力を発揮しました。彼らがクラークに接したのはごくわずかの期間でしたが、1期生を通して間接的に感化を受けたものでしょう。その後国際貢献に尽力した彼らの生き方の原点が、クラークとの出会いであったと考えられます。
 さて、皆さんにとってのクラークはだれでしょうか。いま挙げた3人は、皆さんと同世代の15〜16歳で札幌農学校に入学しています。皆さんはこれまで数多くの文化財から様々な知識を学び取ってきました。しかしいま、世界は“iot”による第4次産業革命の波に見舞われ、あらゆる仕事がグローバルに融合して進化発展を遂げようとしています。これから皆さんは未来の仕事に向かって志を立てると同時に、実生活の中で良識をつちかい、本物との出会いを求めて準備してほしいと願っています。
 最後になりましたが、PTA関係者の皆様、同窓会、後援会の皆様のほか、本日ご列席いただきましたご来賓の皆様には、ご多忙のところ卒業生のためにお越しくださいまして誠にありがとうございます。今後とも本校発展のために、お力添えくださいますようお願い申し上げます。卒業生の皆さん、健康に留意してそれぞれの人生に全力を投入してください。