学校長から/式次第



学校長  野村 春路 
 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとう。保護者の皆様、本日はおめでとうございます。本校は、芝浦工業大学の歴史と伝統を踏まえ、1980年にここ柏市増尾の地に創立され、1990年に男女共学とし、1999年に中学校を併設して今日に至りました。これまで本校は約1万名の卒業生を輩出し、みなさんは高校35期生として、その仲間入りをする日を今日迎えました。
 さて今日みなさんの卒業にあたって、最近の社会の変化について、まず触れておきたいと思います。先日の集会でお話ししましたが、昨年2016年は21世紀の特徴が鮮明になった年でありました。その特徴を3つ上げましたが、
(1)情報革命=インターネットの普及、PC・携帯電話・スマートフォンの技術革新による情報伝達の迅速化、広汎化。
(2)世界の一体化(グローバル化)=人、モノ、お金、サービスが国の枠を超えて、迅速に動く。それを支える世界共通語としての英語の役割増大。
(3)格差の拡大=@先進国と途上国、Aそれぞれの国の中で、所得格差、世代格差。B一握りの富裕層と大多数の貧困層。
 この3つの特徴を踏まえて、2016年は、人・モノ・お金・サービスの動きをうまく利用して利益を上げている人たちに対し、それらの動きに乗り遅れたり、関われなかったりした人々が、“NO”を突き付けた年でした。イギリスのEU離脱(Brexit)、トランプ大統領の当選がそれを表しており、それぞれの国で社会が分断されていることが明らかになりました。今の動きは、保護主義で内向き姿勢です。人・モノ・お金・サービスの動きは、ますます迅速で開放的に、多数の人々の心・気持ちの動きは、閉鎖的にと引き裂かれた状態です。両者の乖離をなかなか近づけることはできません。さらに今年は各国で大きな選挙があり、この様相がますます顕在化しようとしています。そのように情報革命やグローバル化が進む中で、様々な格差・分断をどのように調整して行くのかが、21世紀の課題となって来ています。つまり格差や分断を、調整し富を再分配する筋道をつけることが目標です。
 また別の面ですが、現在世の中は大きく変化して行く過程にあります。2030年ごろには、人口知能(AI)を使い、人々の生活が効率化され、職業・仕事においては、すでにある職業のある業種は大幅に削減され、他方新たな仕事が生まれてくると予想されています。
 前置きが長くなりましたが、そこでみなさんは、これらの社会の動きに巻き込まれながら、どのようにして行くべきなのか、みなさんの高校卒業にあたって、私は次のように考えています。
 まず、みなさんがこれから学ぼうとしている学問は、何のための学問なのかということを一度問いかけてください。先ほど述べたように、21世紀の目標は調整と再分配です。あらゆる人間の叡智を使い、この目標を達成するために、個々人が微力でも学び、働きかけていく必要があります。工学であろうと、経済学であろうと、医学、文学、法律学であろうと、あらゆる学問は人間がよりよく生きていくための活動であるはずです。先の課題解決のための視点を持って、自分の専門領域に取り組んでください。そして学んだことを使って社会で活躍する時には、格差を広げる側に付いて働くのではなく、課題解決に向かう仕事で活躍して欲しいと思います。とは言え、実際にはいつの間にか、一部の富裕層を利することに貢献しているということが起きるかもしれません。世の中にはそのような仕組みが出来上っていると言えるのかもしれませんが、それでもその時までにみなさんが学んだことは、何のためであったのか思い出してください。格差の是正、環境保全、国際交流の推進、弱者への援助、これらのために活躍できる能力と恵まれた環境が、みなさんには備わっています。学ぶことは志すことであります。志をもつこと。そしてみなさんの志の先は、21世紀の課題解決に向けられていることを私は望んでいます。
 みなさん一人一人が、未来を変える力を持っています。そのために卒業式にあたり、何のために学ぶのか、その学ぶことの目標について、私の一つの希望をお話しました。これをみなさんへの将来へのメッセージとしたいと思います。