巻頭 1

 メディアとの付き合い方
学校長  野村 春路 
 下表は、NHK放送文化研究所が1960年から5年ごとに、日本人の睡眠や労働、家事、食事、テレビ視聴、インターネット利用など、普段の生活実態を「時間」という尺度でとらえ、まとめた報告書をもとに作成したものである。報告書では、平日・土曜・日曜の3区分、年層も10代から70歳以上の7段階となっているが、ここでは平日の1区分、10代から30代の3層に絞って表を作成した。
 私は、2015年度まで中学校で社会科の授業を担当していたが、このところの3、4年間、生徒が見ることができたであろうテレビ番組の話題を授業中にするのだが、ポカンとした表情をする生徒が増えていたことから、これはテレビを見ない生徒が増えているのかなぁ、という感じを強めていた。生徒はプロ野球の球団名をよく知らないし、お相撲さんの名前も知らない。何か生徒の情報入手方法に変化が起こっていると思い、実態をつかめそうなこの基本データに出会ったので、簡単な表にまとめてみた次第である。



 この表からは様々な読取ができると思うが、まずはメディアとしてテレビ、新聞がこの20年間に後退し、特に2010年から2015年の期間の落ち込みが大きいことがわかる。新聞については、年層30代にいたるまで、極めて低調である。社会科では新聞を読む教育を盛んに行っているが、生徒にとって新聞は、切り取られたただの「教材」なのであって、もはや情報を得るメディアではないのであろう。テレビは、行為者率が下がり、行為者の視聴時間も下がっている。全体として生徒はテレビを見なくなったのである。今やテレビから情報を得ている生徒は、ベネッセ・コーポレーションの別の資料によれば、模試の成績などが上位者となっているのである。政府は放送法を改正し、テレビ番組をネットで同時配信することを、2019年に全面解禁する方針であるが、今後ますます下降線をたどるテレビの視聴状況を考えれば、当然の施策といえるであろう。
 雑誌・マンガ・本については電子版を含んだ数値である。これらについては行為者率が下がり、30代まで含め、活字離れが進んでいることがわかる。最近は電車の中で雑誌を読んでいる人をあまり見かけないし、そのため棚に雑誌が置き捨てられている光景も見なくなった。
 これらのメディアに対し、スマフォを中心とするインターネット利用の行為は伸びている。男女別では、男子の方がインターネットの時間量が多く、その分女子はテレビを見ている率が高く、時間も長い。推測だが、男子は自室でゲーム、女子は母親とテレビを流して、リヴィングルームにいる時間が長いのかもしれない。
 生徒たちは、LINEを中心とするSNSによって、友人とコミュニケーションを取っているのであるが、それに割かれる時間が増大しているためか、テレビの視聴や新聞・書籍を読む時間が削られているのである。このことから、彼らが得られる情報は、極めて狭い範囲から、また情報の正確性や質も高くないものが、多いかもしれない。このネット依存のスタイルが急速に進み、生徒の学びを狭めていることを十分に意識しておく必要があると思う。生徒たちに、新聞を読もうと言っても、上のデータからすると大人も読んでいないのであるから、これは無理な要求である。となれば、なおさら教員は授業その他で、社会のでき事などについて触れる機会を増やさなければいけないし、また家庭においても、テレビのニュースなどを話題としていただきたいと思う。
 メディアとの付き合い方が、今までとは異なる世代が確実に生まれていることに注目して行きたい 。