巻頭2

 記億のメカニズム
副校長  久保田剛司
 近年の脳科学の進歩により、記憶のメカニズムが明らかになりつつあります。
 脳の中で記憶に関わる重要な器官が大脳皮質と中心部にある一対の海馬です。海馬は、タツノオトシゴに似た形態から名付けられ、その働きが明らかになったのが1950年代でした。ある重症のてんかん患者の治療で海馬を切除したところ、発作は劇的に治まったものの新しいことを一切覚えられなくなりました。一方、昔の記憶はきちんと残っており、日常生活も普通に送れたのです。最新の研究によれは、海馬には場所細胞や時間細胞が広く分布し、例えば私たちが道を通って移動するとその場所や時間に応じた細胞群が活動して、移動していない時でもその活動パターンが頻繁に繰り返されていることが分かりました。一方、海馬の細胞は約1億個しかないため、容量が一杯にならないよう約100億個もの細胞からなる大脳皮質に記憶が転送されます。いわば、パソコンのメモリーのデータを、大容量の外付けハードディスクに移し替えるようなものです。重要なのは、この転送が私たちの睡眠中に行われるという点です。更に転送には通常4週間ほどかかりますが、脳で起こる「細胞新生」が深く関わっていることが最近明らかにされました。この「細胞新生」を促進すると、何と1週間で転送が完了してしまいます。私たちが歳をとって物覚えが悪くなるのは「細胞新生」が衰えるためで、その促進に効果的なのが体を動かす運動であることも分かっています。すなわち、授業や学習を通して新たに海馬に入った情報は、部活中であっても繰り返しリピートされ、しっかり睡眠を取ることで速やかに転送される訳です。適度な運動と充分な睡眠こそが、皆さんの学習を支える重要な習慣なのです。

 主権者教育:現実の問題に関心を
教頭(高等学校)  杉浦 正和
 今年7月以降の国政選挙から18歳以上が選挙権を与えられ、投票日翌日誕生日までの高3生が投票できる。有権者となると友達に政党への投票呼びかけの選挙運動もできる(メールは禁止)。しかし、他の高3生は非有権者なのでそれができない。問題が起きないように注意したい。
 本校では、2003年以来こうした機会に「模擬選挙」を行い、現在まで10回実施して中学生と高校生全員に呼びかけてきた。有権者のつもりとなって最も良いと思う政党に、昇降口の本物の投票箱に投票用紙を投じるのだ。今この取組が主権者教育として全国にも広がっている。早くから現実の問題をしっかり考えて、主権者として意思決定できるようにしたいのだ。自分で考えることは教科や進路だけでなく、現実の社会問題についても同様だ。毎日新聞やニュースを見て、社会の動きに関心を持ち続けてほしい。

 創造性の開発と個性の発揮
教頭(中学校)  佐藤 文博
 中学校に復帰して3年間が過ぎました。改めて中学生の皆さんと生活させていただいて数多くの可能性を秘めた一人一人の個性というものを感じることができました。生徒の皆さんにとって芝柏中の3年間は人生の基礎となり根幹となるものです。そこには各教科の勉強はもちろんワールドデイを中心とした個々の生徒自身を伸ばす教育がたくさんあります。良識を磨く教育。品性をつくる教育。新しい文化を創る教育。広い視野で物事を考えることができる人を育てるにはどのようにしたらよいか。かわいい、いとしい、かけがえのない子供たちに対して、ひとりひとりを大切にするのと同時にすばらしい集団を作るにはどうしたらよいか。先生方は常に考え努力をしています。生徒の皆さんにとって最高の応援団であり、明るい未来に向けて導いてくれる先生方と共に全員で前に進みたいと思っています。

 目標を持つということ
教頭補佐(高等学校)・進路部長  早川 千春
 保護者会、学習ガイダンスと保護者、生徒のみなさんに説明をさせていただきました。センス、才能でなく、ただ習慣が人を決めるのだ、ということです。その意味で、この学校に入学したのは、これまでのみなさんの素晴らしい習慣、努力の賜物です。同じように、努力ができれば、うまくいく可能性が高い。ただし、中学生には中学生の、高校生には高校生の、ふさわしい習慣があります。そこに向かうのは、自分しかいません。1.できないことを目標に持つこと。2.それをやり続けるために「どうやるか」を言葉として言えること。3.それをつぶやきながら何度もやること。できないことを目標に持つことは苦しいですから、自分が決めるしかありません。単純なことで、そして苦しいことですが、できないことに立ち向かう1年にしましょう。4月という特別な時期は自分を変える大きなチャンスです。

 憧れから目標へ
教頭補佐(中学校)・教務部長  松原 誠司
 憧れの人物、憧れの職業、憧れの大学……、誰しも何らかの憧れを持っていることでしょう。しかしながら、憧れという言葉には理想としながらも、一方では自分には手が届かないという思いも込められているように感じます。
 憧れは、本当に実現不可能、達成困難なものでしょうか?荒唐無稽でもない限り、誰でも憧れを叶える可能性はあります。しかしそれを阻んでいるのは、最初から実現が不可能と決め込んでいる自分の心の問題ではないでしょうか。憧れと今の自分との距離をはかり、憧れが現実のものとなるには、どのような方策が必要か考えましょう。これにより、憧れは自分の射程となり、目標として設定されます。
 憧れを憧れに留めずに、現実の目標とし、やがて達成する。そのスタートを切る1年として、自分の高い目標を掲げ、歩き始めてください。今年度の成果を祈っています。