巻頭2

 習 慣 と は
中学副校長  野村 春路 
 朝起きたら外出するまでに、ほとんどの人が顔を洗い、歯を磨くと思う。ところで、今朝どのように歯を磨いたか覚えている人は、一体どのくらいいるのであろうか。左下の奥歯から最初に磨き始めたのか、前歯の裏は何回ブラッシングしたのか、このようなことを明確に答えられる人はいないであろう。ただ歯を磨いた、お口の中がさっぱりしたことが思い出されるくらいであろう。私たちは歯を磨くというような行為については、難しいことは考えなくてもよいように生きているのである。このように、考えなくても繰り返し行えることを習慣という。
 学校では教師が生徒に「学習の習慣を早めに付けること」と事あるごとに話すので、この習慣とは何かを少し考えてみたい。まず習慣が含んでいる重要な要素は、先述の具体例に戻るまでもなく、日々の繰り返し・反復である。よって自明のことではあるが、学習には反復が大切である。この場合反復は、まったく同じことの再生としては行われず、必ずそのたびごとに差異がある。この点につき、20世紀を代表する哲学者の一人、フランスのジル・ドゥルーズ(1925-95)は、差異は反復によって判断できる、差異とは反復である、また反復とは差異を発生することであるという。反復とは「同じことの繰り返し」という意味のように思えるが、どんな反復にも厳密には同じことの反復は存在しない。しかし多くの問題を解法して行くうちに、この差異を省略、無視し、効率よく無駄に考えないようになって行く。習慣は日々の繰り返しの中から「違い」を無視し、無駄に考えないようにする効能があるのである。よって効率よく差異を無視し、無駄なく続けることができるようにもなる。ただし習慣は、捉え方を変えれば、モノを考えない状態へ人を向かわせるという面を持っていることになる。加齢や障害などで脳の機能が衰えても、習慣になっている行為だけはいつまでも抜けない。考えなくても動けるのである。では、習慣的行為は考えなくて済むという意味において、何のために学習の習慣を付けるのか。ドゥルーズは、「思考の最初にあるのは不法侵入である。」と述べている。習慣的行為にはない不測の状態に備えるために、事前にはなるべく省エネで脳を動かし、いざという時、全面的にものごとに対応するということかもしれない。人は考えるのではなく、不測の事態で考えさせられるのである。反復と習慣は別のものであるが、学習においては、反復から始まり、反復の中で学習行動が改善され、習慣になる。習慣が身に付くと、それはもはや変化せずに同じ行動を繰り返し、無駄に考えない省エネ状態になる。そこへ次の段階で新たな分野が提示されるとまた反復、そして修正し習慣になり、また省エネ状態に。このような繰り返し、積み重ねが、学習能力を伸長させて行くのであろう。学習において習慣のない人は、常に脳がフル回転で、目の前に不測の事象が広がった時は、処理不能で思考停止することもあるであろう。

 どんな職業に就きますか
高校副校長  久保田 剛司 
 この春高校に入学された皆さんが社会人となるのは、早ければ7年後、遅くとも10年後には大半が仕事に就いていることでしょう。そのとき、90%以上の確率で消滅している職業のリストが昨年11月に発表され、全世界で話題になりました。これは英オックスフォード大学でArtificial Intelligence(人工知能)を研究するオズボーン准教授によるもので、例えばグーグル・カーに代表される自動運転車が普及すれば、タクシーやトラックの運転手は仕事を失うことになります。コンピューターの技術革新に加えて、センサー技術やロボット技術の急速な進化、3Dプリンターによる製造革命、ビッグデータの活用等によって人間の仕事には大きな変革が起きるといいます。オズボーン氏は、各職業に必要なスキルはどのようなもので、それをどのくらい機械に置き換えられるかを調べました。具体的には、交渉力・説得力・芸術的能力・手先の器用さ等のコンピューター化に障害となるような仕事の特性を9つ選び出し、702の職種を評価したのです。その結果、消滅する可能性の高い仕事には、前述した運転手やデータ入力作業員、レジ係、レストランの案内係といった比較的単純なものに留まらず、知的労働とされてきた仕事も含まれます。例えば金融業界では、人間のトレーダーに代わってコンピューターが1/1000秒以下の高速で小口取引を繰り返す高頻度取引が、すでにアメリカ市場の半分を占めるまでになっています。また法律分野では、裁判前のリサーチのために数千件の判例や弁論趣意書を精査するコンピューターが活用されており、ある企業のサービスを利用すると2日間で57万件の文書の分析が可能です。その結果、弁護士アシスタントであるパラリーガルや契約書専門、特許専門の弁護士の仕事は、すでに一部がコンピューターによって行われるようになっているといいます。ロボットに関しては、ものづくり分野での日本のお家芸である産業用ロボットに留まらず、介護の世界では介護(支援)ロボットが実用化されつつありますし、ソフトバンクの「Pepper」のような感情認識パーソナルロボットも出現しています。
 実は、こうした変化・変革は今に始まったことではありません。かつて女性の花形職業であったタイピスト(2012年には素敵な仏映画がありました…)は今や死語ですし、手作業の洗濯は洗濯機の登場でその仕事はなくなりました。こうした変化に伴い浮いた時間や人材によって新しい技術や知恵が創造され、人類は発展してきた訳です。こうしてみると、今後も残るまたは新たに登場する職業とは、ロボットやコンピューターには未だ不向きなクリエイティブな分野、或いは司会者や危機管理者のように複雑な状況を的確に且つ瞬時に判断する役割が考えられます。その意味でも皆さんは、「創造性」や「コミュニケーション能力」に一層磨きをかけ、将来どのような形で社会に貢献するかを模索して欲しいと思います。

 グローバル化と国際化、日本の構えは本気か
高校教頭  杉浦 正和 
 最近教育界で、グローバル化への対応が熱心に語られる。しかし経済界ではかなり前から注目されていた。大企業が「絶対安全」でなくなって数千億円の赤字を出し、20代男性の3割が非正規雇用となったのがこの影響と騒がれた。教育界で英語を実際に使える力としてTOEFLが目標とされる一方で、英語を使えるだけでなく、社会に発信できる力や問題意識が重要だと識者がコメントする。また、日本文化の輸出としてクールジャパンが話題である。これが本当の対応なのかを考えたい。
 国際化は、語句の成り立ちから国と国の間をつなぐことで、国から選ばれた一部の人が点や線で関われば成り立つ。翻訳や留学、貿易や外交によって対応できる。他方のグローバル化は、「地球の」という意味から国という仕切りが意識されず、面でモノや情報、ヒトが行き交う状態なのだ。つまり、日本の中に様々な国や文化の人々が、生活し働くような状態が普通になっていく動き、これがグローバル化だ。国際化を新しく言い換えたと思う人もいるが、原義から考えると二つは全く違う動きだと考えるべきだろう。そう見ると、日本の議論の不思議さが見えてくる。
 国際化であれば留学や海外駐在は後で日本に戻ってくる前提があったが、グローバル化となればそのまま外国に残って国籍をとってもおかしくない(欧米は二重国籍が普通)。逆に、日本へ来た人たちが留学や観光の後に母国へ戻ると限らず、クールジャパンが気に入れば日本国民となることを望んでよいわけだ。しかし、日本は少数の優秀な外国人の移住だけを認めたいようだ。そんな構えでグローバル化を唱えたところで、腰砕けではなかろうか。私は外国人に来てくれと言いたいし、自分も出てゆく気持ちで臨んでほしいと皆さんにも望みたい。

 創造性の開発と個性の発揮
中学教頭  佐藤 文博 
 芝浦柏は以前から地味で目立たない学校です。しかし、開校当初から「創造性の開発と個性の発揮」という建学の精神を掲げて全ての生徒に対し総合学習をはじめとして、生徒の将来を広げる授業をできる限り提供する学校です。今年度も教務部長を兼任しておりますので、その立場から今の芝浦柏を語りたいと思います。芝浦柏36年目で高校にグローバル・サイエンスとジェネラルラーニングという新しいクラスが設定されました。カリキュラムからいえばグローバル・サイエンスクラスが今まで学校設定教科で自由選択であったSSCI・IIをこのクラスに所属する生徒は必ず学習しなければならないということ以外には変わりません。つまり、10年以上前に2学期制に変更し8月下旬からの授業開始、2012年度から毎週の土曜日を4時間授業に戻し、2013年度より前期期末考査後の自宅学習日7日分を授業日に変更、いずれも、学習時間の確保のために行いました。増えた授業時間は全ての生徒に平等に提供しています。さらに、新学習指導要領で増えた高度な学習範囲や学習量に対して消化不良をおこすことなく生徒に伝えることが出来るように、増えた授業時間を適切に使っております。補習で補うよりも授業中にいかに学習内容を吸収することができるかが本来ですので授業時間の確保は非常に大切です。この授業こそが創造性の開発につながる大切なものです。グローバル・サイエンスとジェネラルラーニングともに自らの目標に向かってきちんと学習を行い、高等学校の基礎的な学力を身に付けてそれぞれの個性を大きく伸ばしていくためのカリキュラム構成です。生徒の皆さんは、なるべく多くのものを吸収して、建学の精神の「創造性の開発と個性の発揮」につながる実力を身につけてもらいたいと思います。

 2015年度入試結果 現役で東大3名、京大1名、一橋1名、東工大1名など最難関で躍進!
 GMARCH国公立以上も55.6%と過去最高に!
高校教頭補佐  早川 千春
 2015年度入試は、現役で東大3名、京大1名、東工大1名など最難関国立で素晴らしい結果が出ました。これは、この学年が上位者講習などを通じて、上位のグルーピングをきちんとやってきた成果です。上位者が励ましあいながら、最難関を受ける雰囲気が生まれました。合格3名以上に東大受験者7名(京都などを足すと10名を越えます)は、過去最高に匹敵するものです。中位に目を向けても、GMARCH国公立以上の実合格者の率が55.6%と過去最高になっています。GMARCHの延べ合格者は、206名・71.5%とこれも過去最高で、昨年の125名・43.6%を大きく上回ります。分析してみると、ライティングを中心とした英語力があったことがあげられます。やはり、英語力は入試において必ず優位に働いてくるといえます。一方、課題は、千葉大・筑波大が少ないとは言わないまでも、ポテンシャルからすれば物足りない結果であることと、特に東京理科大、芝浦工業大などの難化した私立理工系で苦戦したことでしょう。前者に関しては、理系であれば国語・地理、文系であれば数学IIBで苦戦したことが原因です。高校2年生までは、国数英をバランスよく学習することが大事です。今年から千葉大はセンター重視からやや2次の割合を高めてくるとはいえ、英語が重視されるなど、やはり、総合力として苦手をつぶしておくことが重要でしょう。
 後者については、この傾向がしばらく続くと考えると、やはり、国立シフトがのぞましいといえます。今後は英語4技能系入試が始まるなど改革も続きます。授業を中心に、苦手をなくしていきましょう。