■巻頭2■

 東武野田線
副校長(中学校)  野村 春路
 永井荷風の著作に『買出し』という短編小説があり、その中で東武野田線の情景が描写されている。その冒頭は以下のとおりである。「船橋と野田との間を往復してゐる総武鉄道の支線電車は、米や薩摩芋の買出しをする人より外にはあまり乗るものがないので、誰言ふとなく買出電車と呼ばれてゐる。車は大抵二三輛つながれてゐるが、窓には一枚の硝子もなく出入口の戸には古板が打付けてあるばかりなので、朽廃した貨車のやうにも見られる。板張の腰掛もあたり前の身なりをしてゐては腰のかけやうもないほど壊れたり汚れたりしてゐる。一日にわづか三四回。昼の中しか運転されないので、いつも雑沓する車内の光景は曇つた暗い日など、どれが荷物で、どれが人だか見分けのつかないほど暗淡としてゐる。」この作品は1947(昭和22)年12月に書き上げられ、戦後直後の食糧難の世相を描いている。東京方面から食糧の買出しに遠出して来た人々を乗せた電車が船橋に近づくが、船橋駅で警察が持ち物を調べるという警告を受け、手前で降りて人々が農村を歩くという話である。この4月から野田線は「アーバンパークライン」と名称変更されたが、明治時代にアメリカとフランスに外遊し、英語と仏語に堪能な国際人でもあった荷風散人が、この70年後の名称を聞くことがあったとしたら、黒縁の丸眼鏡の奥で、にやりと苦笑するのではないだろうか。

 その時、どう行動するか
副校長(高等学校)  久保田 剛司 
 あれから3年が経ちました。首都圏では、幸いライフラインこそ止まりませんでしたが、公共交通機関は運行停止を余儀なくされ、大量の帰宅難民と前代未聞の大渋滞が発生したことは記憶に新しいところです。その時人々や車がどのような動きをしたか、過去の震災時と大きく異なるのは、曖昧な記憶や推定ではなく、デジタル時代ならではの詳細なデータが残されていることです。すなわち、個々人の携帯の位置情報やTwitterに寄せられた大量のTweet、そしてカーナビの位置情報等の膨大なデータ(ビッグデータ)を分析することで、その時何が起きたのかが正確に再現されています。3月に放映された番組では、私達が記憶に留めておくべきことが2つ挙げられていました。先ずは、普段用いない「潜在需要車」が大量に幹線道路に流入したために大渋滞が発生したことです。足止めされている誰かを迎えに行く、という平常時であれば普通の行為が、救急車等の緊急車両の通行を著しく妨げる結果となりました。また、大きなターミナル駅に運転再開を待つ人々が続々と集まってきたことで、電話ボックスほどの面積に6〜7人も詰め込まれる異常な密集が発生し、将棋倒しやパニックによる事故がいつ発生してもおかしくない状況だったことが多くのTweetからも確認されています。緊急時であるからこそ、二次災害を防ぐためにも個々の都合を優先せず、冷静な判断と行動が求められる訳です。

 個性の発揮
教頭(中学校)  佐藤 文博
 私は教務部長を兼任しておりますので、その立場から今の芝浦柏を語りたいと思います。芝浦柏は以前から地味で目立たない学校です。特別なクラスも特別なクラブも作っておりません。全ての生徒に対して平等に学校での生活を提供する学校です。そのような中で2012年度より土曜日を4時間授業として毎週の学習時間を確保するようになりました。さらに、2013年度より前期期末考査の後の自宅学習日を授業日に変更しました。少し気の緩む期間でしたので学習の継続という意味で大変意義のあることです。本来、10年以上前に3学期制から2学期制に変更した理由が授業日数の確保でしたので、さらに授業日数の大幅増になりました。その全てを行事等にまわすことなく授業時間数の確保につなげおります。おそらく近隣の学校の中でも実授業時間数は多い方ではないでしょうか。さて、そこで強調したいのが生徒の皆さんはこの授業を是非大切にしてほしいということです。授業を通じて中学・高校の基礎的な学習を身につけないと個性は発揮できません。いくら良い発想を思いついてもそれを他に正確に伝えることはできません。いいえ、基礎的な知識がない人に良い発想が生まれるはずがありません。この芝浦柏でより多くの知識を身につけ、教養を育んで欲しいと思います。そして、それを操る力を持って社会に羽ばたいて欲しいと思います。芝浦柏の全ての皆さんに期待しています。

 幻想に終ったソチの平和
教頭(高等学校)  杉浦 正和
 ソチオリンピック終了後、平和の祭典が幻想だったと言うかのように、ロシアが大胆不敵な行動に出た。新聞で大きく取り上げられ、断続的に情報が流れている。みなさんはこの大事件に関心を持って追っているだろうか。
 ウクライナで親露政権が倒れた政変の直後、ロシアがクリミア半島併合を進めた。1990年代初めのソ連崩壊後、ロシアが先進国グループにG8として加わった大国の構図が崩れた。欧米先進諸国は、ロシアの軍隊派遣を国際法違反として追及し、制裁を課す。ロシアは、過去のクリミア半島ウクライナ編入という過ちが、住民の意思で正されたという立場で、統合化を進める。更にウクライナ東部も狙っている。
 国連常任理事国でもある大国の大胆な国境変更に、国際社会は対応に悩みつつ恐々と動いている。ロシアから資本を引き揚げると、ロシアが経済的な打撃を受ける。しかし、それは国際経済全体としては、経済は互いに利益を引き出すものなので(相互依存と呼ぶ)欧米の景気も悪化させてしまう。と言って、ロシアの暴挙を放置すれば、国際正義が保てなくなってしまう。中国の大国主義的な行動が今後心配されるだけに、放置という選択がとれない。
 中韓が日本の戦争中の悪行を激しく攻撃し続けることを考えても、不正義の行動をとった結果は後々まで響いてくる。政治経済両面への影響の大きい事件なので、今後の進展を熱心に見てほしい。