■巻頭■

 将来つきたい職業に関心を持ったとき
学校長  菅沢  茂
 一昨年の4月から本校は完全週6日制の授業に切り換わった。今年も芝柏生全員の勉強に対する“やる気”を醸成し、本校の更なる発展の年にしたいと願っている。生徒には実質的に平日2時間以上、日曜祝日4時間以上の自学自習を毎日実践するよう指導したい。このことは生徒を目標管理や計画管理のできる創造的で未来志向型の自立した人間に育てるためであり、結果として学校の授業がよく分かり、面白くなるからである。
 以下では、これまでも本誌191号で紹介した、「学習意欲に関する調査研究」(2000〜2001、国立教育政策研究所)のアンケート結果に基づき、改めて生徒をやる気にさせるための仕掛けや戦術を学びたい。また、生徒のやる気を育むための保護者と教職員の心得とし、特に「将来の職業に関心を持つ」という視点の重要性について確認したい。
 アンケートでは、「次のそれぞれの場合に、あなたは勉強に対してどんな気持ちになりますか。」という質問について、小学生には42項目、中学生・高校生には44 項目を聞いている。アンケート結果をまとめると、勉強を「とてもやる気になる」「やる気になる」の合計ベスト5とその逆の「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」の合計ワースト5は下表のとおりである。

<「とてもやる気になる」「やる気になる」合計ベスト5>

〈小学校〉
1 授業がよく分かるとき 95.2%
2 先生にほめられたとき 94.6%
3 授業がおもしろいとき 94.6%
4 クラブ活動などに一生懸命に取り組んでいるとき 94.2%
5 成績が上がったとき 93.5%

〈中学校〉
1 授業がよく分かるとき 94.0%
2 授業がおもしろいとき 91.8%
3 将来つきたい職業に関心を持ったとき 90.5%
4 成績が上がったとき 87.1%
5 将来行きたい学校がはっきり決まったとき86.8%

〈高等学校〉
1 授業がおもしろいとき 93.3%
2 授業がよく分かるとき 93.0%
3 将来つきたい職業に関心を持ったとき 89.7%
4 将来行きたい学校がはっきり決まったとき88.9%
5 成績が上がったとき 86.8%
5 級や段、資格などを取ろうと思ったとき86.8%

<「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」合計ワースト5>

〈小学校〉
1 授業がつまらないとき 83.3%
2 家族の仲が悪かったりしていやなとき 80.0%
2 先生にしかられたとき 69.5%
4 友だちにけなされたとき 68.3%
5 授業がよく分からないとき 64.5%

〈中学校〉
1 授業がつまらないとき 95.0%
2 授業がよく分からないとき 77.2%
3 家族の仲が悪かったりしていやなとき 75.4%
4 母親に「勉強しなさい」といわれたとき73.5%
5 家の人に友だちと比べられたとき 69.4%

〈高等学校〉
1 授業がつまらないとき 94.8%
2 授業がよく分からないとき 81.1%
3 母親に「勉強しなさい」といわれたとき78.3%
4 父親に「勉強しなさい」といわれたとき72.0%
5 家族の仲が悪かったりしていやなとき 70.2%

 小・中・高校生が共通して勉強を「とてもやる気になる」「やる気になる」のは、「授業がよく分かるとき」「授業がおもしろいとき」「成績が上がったとき」である。
 逆に、「授業がつまらないとき」「授業がよく分からないとき」「家族の仲が悪かったりしていやなとき」は小・中・高校生とも共通して「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる。」と答えている。
 「やる気になる」「やる気にならない」のいずれにも授業が大きく関係していることがよく分かる。
 また、年齢の幅の広さにもかかわらず小・中・高校生が共通して「家族の仲が悪かったりしていやなとき」は「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」と答えており、家族関係がよくないことは学習意欲を阻害している大きな要因となっていることが分かる。
 さて、中学・高校ベスト5の第3位に着目したい。等しく「将来つきたい職業に関心を持ったとき」である。
 教育学では、子どもの学習動機の筆頭に「興味・関心の原理」が置かれているが、まさに生徒は将来の仕事に関心を持ったとき、現実社会との接点を自覚してがぜん学習に強い意欲を示すのである。このことはすでに20年ほど前、九州の中堅校にすぎなかった県立城南高校の驚異的な進学実績の向上で実証されている。当時、高1の一担任教師の発案で生徒全員に休業期間中、進路開発のフィールドワーク調査を課しその結果をポートフォリオに累積させたのである。これは興味・関心の原理に「活動の原理」を加えた良い実践であった。
 本校においても、中学の職業体験や高校の大学訪問をはじめ様々な生徒活動を用意しているが、ご家庭においても巧まずして子どもがその気になるような仕掛けを工夫実践していただきたい。
 例えば、新聞の大小コラムや「芝柏の80冊」を毎日30分でよいから読み込むことである。文字を通して生徒は外の社会を思い遣り、いま何のために勉強にいそしむのかを理解するだろう。
 あるいは、親子で話題の映画を見に行って帰路その評価を討論したり、博物館や美術館、ついでに大学を見学に行って感想を述べ合ったりすることである。
 そのとき、毎年夏期休業に入る前に配布する『東京知的見聞録』をぜひ携行していただきたい。大学中心のガイドブックとは異なり、東京の各エリア別に大学を含むいろいろな知的文化財を紹介している。例えば2013年度版の巻頭から順に拾えば、法務省法務史料展示室、柏市戦争遺跡、渋谷の金王八幡宮、子規文庫、錯覚美術館、国立科学博物館、東京国立博物館、印刷博物館、貨幣博物館、憲政記念館、旧江戸川乱歩邸、会津八一記念館、演劇博物館、おもちゃ美術館などが挙げられ大変興味深いものがある。