■巻頭■

  世界を視野に進路をひらく
学校長  菅沢  茂
 日本はいま政治経済や国際問題など、いろいろな意味で危機に直面しています。このため生徒には、常に現実の世界に目を向けて学校生活を送り、グローバルな視点で真剣に進路を開拓してほしいと訓辞しています。
 例えば「日本から海外への留学者数の推移」(文科省集計最新版)をみると、残念ながら2004年の82,945人をピークとして2010年の58,060人まで減少の一途をたどっています。留学は自己規範Normを確立するとともに、日本人としての自尊感情や向学心を醸成し、何よりも創造性の開発にまたとない機会を与えてくれます。
 “可愛い子には旅をさせよ”といいますが、芝柏生には国内の旅に加え、ぜひとも海外に留学させて鍛えたいものです。かくいう私も留学経験はありませんが、4人の子のうち2人をカナダとドイツに送りました。高校時の交換留学です。カナダに行った長女は帰国後本人の希望で渡米し、カレッジを経て現在もカリフォルニアの大学に通っています。学期中はほとんど2〜3時間の睡眠で、文献解読や討論の準備、レポート作成に忙殺されるそうです。たまに帰国すると、その猛烈なパワーに家族中が圧倒されます。
 “自分探し”のつもりでドイツに行った長男は、独語力は身に付けたもののすっかりやせて帰国しました。ホストマザーの家訓になじめず、最後まで抵抗したようです。その後、大学受験に復帰して進学したものの、現在も進路を模索し、親は遠目で見て見ぬふりをしています。
 中高の留学ではAFSやWYSなど、国家認定の支援機関があり、また、大学では数多くの姉妹大学と提携した留学制度があります。留学試験をめざすことが学習に対する意欲にもつながるものと考えます。
 アメリカやカナダのように学費が高い国ばかりではありません。例えばOECD加盟国のうち半数の17か国が授業料無償ですし、日本とアイスランド以外は給付型の奨学金も手厚く支給していると聞いています。ドイツやフランス、北欧4か国においても、外国人を含め大学院まですべて無償であり、国家が責任を持ち公平公正にして高度な人間形成の理想を追求しています。
 その国の言語さえ使えれば、世界で自由に学ぶことができるのです。留学を1年といわず2〜3年経験し、世界を視野に入れた発想、世界標準に基づいた進路設計をしてほしいと、強く希望します。
 例年、“世界大学ランキング”で最上位に入るカリフォルニア大学バークレー校は約90%が留学生だと聞きました。世界中から意欲的な学生が集まってくるのでしょう。
 また、欧米にあっては、一つの街そのものが大学であって、潤沢な予算とアカデミックな雰囲気の中で学生は朝から晩まで24時間体制で学問の訓練に励みます。学期中にアルバイトをする余裕などありません。宿題も多く、寝る間を惜しんで予習復習に励み、討論中心の授業に備えます。その厳しさは、就職してからの方が楽だというほどで、ついていけない多くの学生が落後してゆくそうです。
 日本の国力を挙げるためにも、芝柏生に外国の本物の大学を経験してきてほしいものです。
 これからの若者は、情報通信技術に堪能であることはもちろんですが、同時に世界言語を徹底的に身につけることが不可欠です。
 例えばface bookも日本語版では国内のお友達とのネットワークに留まります。トーイックTOEICテストでは、900点を取った者でも、営業には使えないと聞くことがあります。このため、アメリカやカナダへの留学生を対象に開発されたトッフルTOEFLテストをめざすほうがよいかもしれません。
 現在このテストは、2005年より開始されたインターネット利用によるiBT(Internet-Based Testing)と呼ばれる形式をとり、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4部から構成されています。試験は5時間近くかかる過酷なもので、私の娘もかなり苦労してアメリカ留学のためのスコアを取得しました。
 一方、机上の資格だけではなく、真面目な外国人とお友達になって実際の外国語活用能力を習得することが大切です。さらに、ペンフレンドやフェイスタイム、スカイプを使って外国のお友達とリアルタイムに交流することもよいでしょう。

 さて、本校では例年のとおり総員で学校経営方針を作成更新し、5月のPTA・後援会総会で配り、ホームページにも公開します。「めざす学校像」、数年先を視野に入れた「中期目標と方策」及び各年度の「教育活動の重点目標」に加え、内外の評価結果も分かりやすくまとめて公表しています。教職員一丸となって目標管理を意識し、よりよい教育実践に努めています。詳しくはぜひウェブサイトでご確認ください。
 上記の中期目標と方策の一つに、「進学実績の向上」を掲げています。最近の卒業生はそこに示された数値目標にかなり近づき、見事な入試結果を残しています。この春も国公立大合格者数が過去最高となりました。授業への集中とともに、家庭での予習復習を淡々と自律的に実践した成果です。これら先輩が築いた自学自習の精神を、今後芝柏生がぜひとも受け継いでほしいと願っています。
 本校は昨年度から完全週6日制の授業に移行し、授業時間数を増やしました。1年間の反省を踏まえて、学校行事や時間割、会議の持ち方などに様々な工夫を加え、いっそう安定した教育活動としてまいります。
 最後に、昨年12月末に開始したグランド人工芝化の工事ですが、二度にわたる冬の大雪のためひと月ほど遅れています。5月末には、生徒中心のさわやかな竣工式を予定しておりますので、保護者の皆様のご支援をお願い申し上げます。