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 生徒のやる気をどう育てるか
学校長  菅沢  茂 
 昨年の4月から本校は完全週6日制の授業に切り換わった。今年も芝柏生全員の勉強に対する“やる気”を醸成し、本校の新たな飛躍の年にしたいと願っている。生徒には引き続き平日2時間以上、日曜祝日4時間以上、自学自習の習慣を身につけるよう指導してまいりたい。その目的は、子どもたちを目標管理、計画管理のできる創造的で未来志向型の自立した人間に育てることにある。
 以下では生徒のやる気を育むための保護者と教職員の心得として、学習意欲に関する調査研究、健康管理、声を出して勉強を繰り返すことについて確認したい。
 一つ目は、生徒をやる気にさせるきっかけである。
 昨年本誌187号で紹介した「学習意欲に関する調査研究」(2000〜2001、国立教育政策研究所)から、生徒をやる気にさせるモチベーションを学びたい。
<ほめて励ます>
 中高生の7割以上が「母親に勉強でほめられたとき」、同じく6割以上が「父親に勉強のことでほめられたとき」、さらに中高生の約8割が「先生にほめられたとき」、同じく約7割が「先生に励まされたとき」にやる気になると答えている。一方で、中高生の7〜8割が、両親に「勉強しなさい」といわれたときにやる気がなくなると答えている。折に触れてほめて励ますことが、愛と自信に満ちたやる気のある人間づくりに不可欠である。
<よく分かるおもしろい授業を工夫する>
 中高生の9割以上が「授業がよく分かるとき」にやる気になると答えている。「授業がよく分かる」ことは勉強をやる気になる要因として中学生では1位、高校生でも2位となっている。同様に、「授業がおもしろいとき」も中高生の9割以上がやる気になると答えている。生徒の好奇心が湧き立つときその顔が前を向いて光を浴び、面が白くなるのだという。教師は日々よく分かるおもしろい授業を心掛け工夫しなければならない。
<将来やりたい仕事や行きたい学校を一緒に考える>
 中高生の約9割が「将来つきたい職業に関心を持ったとき」「将来行きたい学校がはっきり決まったとき」にやる気になると答えている。ネットで「やりたい仕事」と探すと、即座に1,000種類を超える職業を解説するサイトが出てくる。予備校のHPからは日本の大学の学部・学科と仕事との関わりを学ぶことができる。ネット探索を資料点検や現場見学に繋げて具体的な進路目標の設定に役立てるとよいだろう。
 将来の仕事を考えるとワクワクしてくる。学校には進路指導のほかPTA主催の仕事塾もあるが、ぜひご家庭でも子どもたちが巧まずして将来の仕事に夢ふくらませるような仕掛けをお考えいただきたい。
 二つ目は、健康管理についてである。
医師で血液学者の石原結實(ゆうみ)氏は、『1日1回体を「温める」ともっと健康になる!』(三笠書房 知的生き方文庫)の中で体を温めることの効能を強く説いている。以下にご紹介したい。
 私たちの体は36.5℃の体温で一番はたらくようにできている。ところが最近は35℃台しかない人がたくさんいる。体温が1度下がると、代謝は約12%落ち、免疫力は30%以上低下するといわれている。これでは「内臓の消化力」も「病気と闘う免疫力」もよくはたらかない。だから、疲れがたまり、アレルギー、肥満、高血圧、メタボ、うつ、癌など、さまざまな病気が出てくる。
 体が疲れたときは、内臓も疲れている。疲れて消化力が弱っている内臓にたくさんの食べ物が押し込まれては、消化不良を起こし、血液が汚れてかえって病気につながってしまう。そんなときは、体を温めて血行をよくし、少食にして内臓をいたわるだけで、明日の元気が生まれてもっと健康になると述べている。
 具体的には、生姜紅茶や梅醤番茶、ニンジン・リンゴジュースによる少食・プチ断食、腹巻の常用、散歩やストレッチの継続、22時〜2時を外さない睡眠など詳細に説いている。とくに、紅茶にひねしょうがの汁を入れて毎朝飲むことを勧めている。漢方医の友人から聞いた話しでは、秦の始皇帝が長命な村の古老にその秘訣を尋ねさせたところ、朝散歩して帰宅後にしょうが湯を飲むだけと答えたという。なるほどと思う。
 三つ目は、声を出しながら勉強を繰り返すことである。
 自学自習の確立は繰り返しにある。有名な話だが、理論物理学の世界でノーベル賞を取った湯川、朝永の両氏を教えた恩師が、自分は物理を教えたつもりはないが物理を好きにさせた自信はあると語ったという。好きこそものの上手なれというが、その湯川が、自分にもし独創性があるとすれば、それは素読のお陰だろうと語った。素読は6歳のころから経書の漢字を大人と一緒に唱和し暗唱に至る学習法で、百回以上音読を繰り返してから意味の理解に入る。幕末の藩校でもこのやりかたを継承している。
 やる気は、意志や情感、創造性や芸術性、形象や心象をつかさどる右脳が開発するといわれている。唱和はもとより、最近の研究では漢字も右脳に記憶されるという。このことから江戸期の武士教育は意外にも先進的な創造性開発の方式を取っていたと考えられる。子どもが自分で走り出すきっかけを与えているからである。幕末に一万を超えたといわれる寺子屋もそっくりこの方法をまねている。
 そういえば空海もまた大学寮を出奔した後、諸国を遍歴して山林とそうに明け暮れたが、室戸岬で吉野修験の行法である虚空蔵求聞持法を完成させたという。これは虚空蔵菩薩のマントラを百日で百万遍唱える密教の秘法で、繰り返しの発声に意味があると考えられる。
 若者は壮大なライフプランを思い描くことが大切である。その時、何に力点を置くか自分自身で決められるようにこの芝柏で教育したいと願っている。