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 高校芸術鑑賞会(ミュージカル鑑賞)
副校長(高等学校)  久保田剛司
 年に一度の芸術鑑賞会が11月2日(金)に汐留の電通四季劇場「海」で実施されました。本校の芸術鑑賞会のコンセプトは“本物に触れる”、演目は勿論、出演者・会場も一流に拘り、3年のサイクルで、古典芸能・クラッシック音楽・演劇(ミュージカル)を鑑賞しています。今年は演劇(ミュージカル)の年に当たり、劇団四季による「オペラ座の怪人」を鑑賞しました。「海」は、汐留地区の再開発に伴い2002年にオープンしたカレッタ汐留に設けられた劇団四季の常設劇場で、ステージもオーケストラピットも仮設の劇場とは一線を画す立派なものです。
 さて、このミュージカルの舞台となったパリ・オペラ座は、19世紀半ばにナポレオン三世がフランス帝国の首都パリを世界で最も近代的かつ華麗な街とするべく、徹底的な都市改造を行った際の目玉となる建設事業でした。設計公開コンペで選ばれたのは弱冠36歳の無名建築家ガルニエの案で当時のどんな様式にも似ていないものでしたが、その建設工事は難航し15年の歳月を費やしてようやく完成にこぎ着けます。難航の原因の一つが地下水脈から噴き出した大量の水、当初ガルニエは汲み出そうとしましたが次々と湧き出てくるため汲みだすのを諦め、建物の基礎部分にプールを造り溢れた水は下水道に流し込むことにしました。このプールが、物語の中で怪人が隠れ棲むオペラ座地下の「湖」というわけです。地上十階、地下七階の非常に複雑な構造のオペラ座では、その後永い歴史を刻む間、ときどき変な物音がするとか、化物が棲んでいて時々現れるらしい、という噂にこと欠かず、これを耳にした仏の作家ガストン・ルルーが小説「オペラ座の怪人」を1910年に出版します。
小説としては二流の作品に過ぎませんでしたが、怪異な構造のオペラ座に怪人が現れるという着想を高く評価した、英の作曲家アンドリュー・ロイド・ウェーバーによってミュージカルに仕立てられた作品が今回の演目ということになります。 1986年のロンドン初演の2年後には劇団四季が日本での上演をスタートし、以来公演回数5551回、入場者数560万人に上るという名作です。
 当日は一般のお客様と相席となりましたが、大変見応えのあるステージに対する生徒諸君の鑑賞態度も立派でしたし、少々風が冷たかったものの好天にも恵まれ、名作と称賛されるミュージカルに触れるよい機会であったと思います。

 ライオンキング
副校長(中学校)  野村 春路
 中学の芸術鑑賞会は、11月2日(金)に劇団四季の「ライオンキング」を観覧した。劇場はJR浜松町駅から徒歩約7分、「ライオンキング」専用劇場の四季劇場「春」であった。当日は好天に恵まれ、事前に配布したチケットを忘れた生徒が数名いたが、大幅な遅刻者もなく、校外学習は一般の方が動いている中を集合・解散するという社会的な経験を積む側面もあるので、この点はまずまずであったと思う。
 この演目は、2008年にも中学の芸術鑑賞会において扱われており、私はそれ以来2度目の鑑賞となった。再び鑑賞して感じた印象は、舞台芸術としてのあらゆる演出効果を存分に使っており、さらにそれらの細部を彫琢して洗練させていたということである。登場するそれぞれの動物や植物に扮する役者の身体表現、文楽の人形遣いを吸収している動物のあやつり動作、衣装・小道具、エスニックな響きの歌や音楽の音響効果、場面転換などで使われる照明効果、2階・3階席にまで役者が配置されホール全体をアフリカのサバナ草原に仕立てる工夫、役者を宙づりにして観客を驚かせる「外連(けれん)」にあたる視覚効果、そして何と言っても、ステージの中核となる「プライドロック」の舞台装置である。この「プライドロック」はステージ下の「奈落」かららせん階段状に回転しながらせり上がってくる仕掛けであり、階段の高低差が4mほどあるので、専用劇場ならではの大掛かりな舞台装置である。この仕掛けが重要な理由は、「プライドロック」がはるかに大草原を見渡すプライド・ランド王国の権威を象徴する巨大な岩であり、この岩をめぐって物語が展開するからである。
ストーリーのテーマは、洋の東西にかかわらず、神話や叙事詩に散見される「王殺し」と息子の世代の復讐である。主人公は王の息子シンバ、この子供のライオンが父親の死に自分が関係しているという自責の念から出奔し、放浪の後仲間を伴い帰郷し、叔父の悪行をあばき、復讐を果たすというものである。この間に主人公が様々な体験を通して内面的に成長していく過程を描く教養小説的な物語であるため、中学生にも共感しやすく、わかりやすいものとなっている。とは言え、「ライオンキング」の面白さは、そのストーリー性より、先述した舞台効果のあるゆる可能性を駆使して観客を楽しませるという、そのエンターテイメント性にあると思う。この点を再確認した今回の観劇であった。