■巻頭■


  生徒はどんなとき、やる気になるのか
学校長  菅沢  茂
 昨年わが国は、新学年が始まる直前の3.11、かつて経験のない大震災と巨大津波に襲われ、その後福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染に終始見舞われた。生徒の命をお預かりするわれわれ学校関係者にとって、何かしら目に見えない不安に駆られ、被災地のご不幸と多難を思って落ち着かず、常にそわそわとした気分の中で年度末を迎えることになった。
 今年は辰(たつ)年に変わり、振動に奮い立つ辰(しん)の年、新緑の萌え上がる五月の年といわれている。私は新年の始業集会で生徒に、今年は原発事故を断ち切り、震災からの復興に立ち上がるとともに、学習意欲を喚起する年にしようと呼び掛けた。4月から本校は完全週6日制に切り換わる。芝柏生全員のやる気を奮い立たせ、本校の新たな発展の年にしたいと願っている。そのため、生徒には平日2時間以上、日曜祝日は4時間以上の家庭学習を自ら義務付けるよう指導している。
 以下では、「学習意欲に関する調査研究」(2000〜2001、国立教育政策研究所、代表:富岡賢治)について、少し詳しくご紹介したい。子どもの学習動機は千差万別で一概には語れないが、実際に即したこの調査研究は有用で、子どもを励ますヒントになりそうである。教師にはもちろん、保護者の皆様にもぜひ参考に供したいと考える。この研究の目的は、子どもたちが意欲をもって学習に取り組めるよう、子どもへの一言や具体的な学習体験等の事例を収集し、学習動機を明らかにすることにある。研究方法は、約1,400名の小・中・高校生とその保護者のほか、同地域の教師、学習塾の教師・生徒・保護者に対するアンケート及び聞き取りの調査で実施している。
 調査結果の概略を、以下にまとめたい。
 家族との関係では、「とてもやる気になる」「やる気になる」(以下では、「やる気になる」と書く。)のは、中・高校生の65%以上が「父親に勉強のことでほめられたとき」、中・高校生の70%以上が「母親に勉強でほめられたとき」と答えており、ほめることやはげますことが学習意欲を高めることに効果的であることが分かる。中・高校生の50%以上が「家族が仲良く楽しくすごしているとき」は、やる気になると答えている。
 一方、「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」(以下では、「やる気がなくなる」と書く。)のは、中・高校生の約60%が「父親に勉強のことでしかられたとき」や「母親に勉強のことでしかられたとき」と答えている。また、中・高校生の50%以上が「父親に『勉強しなさい』といわれたときや「母親に『勉強しなさい』といわれたとき」と答えている。特に、高校生は父親にいわれても母親にいわれても72.0%と高くなっている。
 また、中・高校生の70%以上が「家族の仲が悪かったりしていやなとき」にやる気がなくなると答えている。
 中・高校生の60%以上が、「家の人に兄弟姉妹と比べられたとき」にやる気がなくなると答えており、さらに、中・高校生のおよそ70%が「家の人に友だちと比べられたとき」にやる気がなくなると答えている。
以上のことから家族は仲良く楽しく過ごし、兄弟姉妹や友達と比較しないことが大切であることがわかる結果となっている。
 次に、学校・教員・友達との関係では、中・高校生の約80%が「先生にほめられたとき」にやる気になると答えている。中・高校生の約70%が「先生にはげまされたとき」にやる気になると答えている。
 また、中学生の94.0%、高校生の93.0%が「授業がよく分かるとき」にやる気になると答えている。
 「授業がよく分かる」ことは勉強をやる気になる要因として中学生では1位、高校生でも2位となっている。同様に、「授業がおもしろいとき」は中学生の91.8%、高校生の93.3%がやる気になると答えている。
 逆に、「授業がつまらないとき」は中学生の95.0%、高校生の94.8%がやる気がなくなると答えている。「授業が分かるとき」「授業がおもしろいとき」にはやる気になり、「授業がつまらないとき」にはやる気がなくなっている。
 学習意欲を高めていくためには、やはり、当然のことであるが「分かる授業」「おもしろい授業」となるように教師側の工夫が重要であることが分かる。
 また、聞き取り調査で、学習ノートなどに返事を書くなど、一人一人の子どもへの具体的な教師のかかわりが学習意欲を高めることにつながっていることが分かる。
 また、中・高校生の70%以上が「仲のよい友だちができたとき」にやる気になると答えている。聞き取り調査でも良いライバルと競い合うことや先輩からはげまされることにより意欲が高まったという事例もある。学校や地域でどのような友人関係ができているかということも学習意欲を高めていくうえで大きな要因であることが分かる。
 その他、中学生だけに見られる特徴的な答えとして、「父親・母親が勉強の大切さを真剣に話してくれたとき」に、父親の場合は否定的な答えが過半数を超えているのに、母親の場合には肯定的な答えが半数を上回っている。
 高校生の明確な特徴としては、勉強に対する気持ちが「とてもやる気になる」という肯定的な答えは「将来行きたい学校がはっきりと決まったとき」「将来つきたい職業に関心を持ったとき」が突出している。
 「やる気」は、意志や情感、創造性や芸術性、形象や心象をつかさどる右脳が開発するといわれている。だとすれば、清新な生徒の人間形成にとって、読書やスポーツをとおして他を思い遣るとともに、映画をとおして世界に思いを致し、無限の容量を持つといわれる右脳を刺激することが近道だとも考えられる。
 最近でも、「ハヤブサ」関係の3本、「三丁目の夕日」、「戦火の馬」、「ヒューゴの不思議な発明」など、若者の夢と感動を膨らませる名作には枚挙にいとまがない。ともに見て感想を述べあい、人生を語り合うことも大切である。